マンスリーマンション 激安活用術と生活の知恵

「借地借家法」の下では、基本的に一度貸したら土地も住宅もなかなか戻ってこないという、貸主にとっては「更新の拒絶」が極めて難しい制度となっていました。
例えば通常の借家では、賃貸契約期間を二年と定めても、二年後に貸主の側から契約を打ち切ること(=「更新の拒絶」)が極めて難しくなっていたのです。
契約更新を拒絶するためには、貸主の側に「正当な事由」(例えば自己使用の必要など)がなければならず、過去の判例で厳しく限定されてきました。
一九九一年の法改正で、借地借家関係の法律を一本化した新法の「借地借家法」が制定されます。
この法律により、借地契約については「定期借地」の制度が導入されました。
同時に「正当な事由」の欄に、立退料の金額を加味することも明文化されます。
さらに一九九九年に「定期借家」の制度が導入され、二〇〇七年には事業用定期借地権の期間が延長されました。
これらの改正によって、期限を区切った定期契約が可能となり、土地建物の有効利用が事業用を中心に様々な分野で進んでいきます。
また五〇年間の定期借地権付き住宅分譲が、価格の手頃さから一部で人気を集めています。
しかしながらこの制度は、既存の契約には適用されません。
既存の契約はそのまま継続され、賃貸契約の期限が来ても、借主が契約の更新を求めれば「正当な事由(立退料の支払いを含む)」がない限り拒絶できません。
今でも旧来の「借地借家法」の下での賃借契約の方が圧倒的に多く、定期借家は全体の五パーセント程度、また首都圏においても二〇パーセント程度しか普及していないようです。
絶対数としては、定期借地・定期借家はまだ極めて限られたものなのです。
アパート経営の秘訣かつて大都市周辺での世帯数増加が続いた時期には、近郊の農家を中心に地主は、所得税の節税、相続税対策、固定資産税対策を兼ねて、借入によって簡易で狭小な「木賃アパート」を建ててきました。
特に市街化区域の農地については、「宅地並み課税」の導入により固定資産税評価が厳しくなっていた時代でした。
これらの土地は、更地のままにしておくと固定資産税も高く、相続時には評価額のすべてに課税されてしまいます。
一方、借入金でアパートを建てれば、収入は減価償却費や借入金利と相殺できるので所得税はほとんどかからない上に、土地の固定資産税・相続税においても小規模住宅の敷地として軽減措置が受けられます。
さらに建物の相続税評価額は、借入金で賄った実際の建築費よりも相当低く、借入金はそのまま相続財産から控除することができました。
その結果、相続税額が大幅に少なくなるのです。
また借入金は子供に残しても、家賃で返済することができます。
木賃アパート経営は、短期間で建築資金を回収するとともに、借家人に子供ができれば狭すぎて、また古くなれば住みづらくなり、同じ借家人がずっと住み続けることができないようなつくりになっていたのです。
これが秘訣でした。
頻繁に借家人が代わることで、入居の度に「礼金」が入り、また家賃の値上げがしやすくなることも魅力でした。
「木賃アパート」ブームが去った後も、子供のいる「家族向け」の間取りは避けて、カップルあるいは単身者向けの狭い間取りの賃貸マンションが大量に建設されてきました。
このような住宅建設を促す税制と、一度貸したらなかなか戻ってこないという借家法の歪んだ規制が、賃貸住宅の過剰供給と質の低下を招いて、結果的に先の一九パーセントという高い空室率につながっていったのでした。
「持ち家」政策の位置づけ-日本の住宅政策には、もう一つの問題点があります。
それは、住宅政策が経済対策と位置づけられ、結果として「持ち家」支援を中心にした政策・税体系が「逆進的」となってしまったことです。
住宅ローン金利の税額控除や、(旧)住宅金融公庫の長期・低利融資といった、持ち家支援の政策に膨大な税金が投入され、「公庫(貸出限度)枠」の拡大・追加も行なわれてきました。
また(旧)日本住宅公団の住宅建設も、分譲住宅が中心でした。
一戸当たりの建築面積が賃貸住宅の二倍から三倍になる持ち家の建設は、それだけ経済効果も大きかったのです。
そして持ち家推進の政策は、社会の安定に寄与するとも考えられてきました。
一方で基本的には、低所得者に対する家賃補助は行なわれてきませんでした。
生活困窮者に対する生活保護には最低生活費の一項目として「住宅扶助」がありますが、一般的な低所得者を対象にした制度でません。
また諸外国で行なわれているような、低所得者層に対する低廉な家賃の公共住宅・公的補助住宅の供給も、わが国では極めて貧弱です。
持ち家支援に重点を置いた住宅政策の結果、中堅所得者や場合によっては高額所得者に税の補助を大きく与え、借家住まい・低所得者層に対する住宅補助・援助のためには税金は使われてきませんでした。
住宅政策に関して、所得再分配機能はほとんど果たされずに、「逆進的」な再分配になってしまったのでした。
「不動産格差」と日本の格差問題近年になって急速に「格差」が広がり、非正規社員の大量解雇とホームレスの増大で、二〇〇八年の年末には「年越し派遣村」が大きな社会話題となりました。
特に、「失業」がそのまま「ホームレス」に直結してしまう状況を、「年越し派遣村」の主催者湯浅誠氏は「滑り台社会」と呼び、「うっかり足を滑らせたら、どこにも引っかかることなく、最後まで滑り落ちてしまう」社会になりつつあると警告しています。
日本が「滑り台社会」になってしまった原因の一つは、これまで家族と企業に頼ってき「不動産格差」一、持ち家政策の功罪-機能しなくなってしまったことにあります。
持ち家支援の住宅政策が、借家住まい・低所得者層を冷遇してきた結果ともいえるのではないでしょうか。「家を持てた」層と「借家にしか住めない」層における不動産格差が、「滑り台社会」に拍車をかけてきたのです。
日本の人口は二〇〇五年をピークにすでに減少しつつあり、世帯総数は二〇一五年を境に五〇六〇万世帯から減少に転じると予測されています。
一方で、住宅総戸数は二〇〇八年現在で五七五九万戸に達し、空き家数は七五七万戸にもなりました。
これから先、これだけの空き家が埋まるということは不可能に近いでしょう。
住宅戸数は「絶対的過剰」といってよい時代に、突入してしまったのです。
日本の住宅政策は、これまでの持ち家の建設支援を中心とした金融・財政政策から、借家住まい・低所得者層を中心とした支援・補助に重点を移す時ではないかと思います。
低所得者層に対する家賃補助や、保証の提供などの入居支援を行ない、現存する公営住宅の運営においても、既得権益を排除して入居者の所得制限を厳格に適用するべきだと思います。
その上で立ち退き問題を克服して、低密度で老朽化した公営住宅の建て替えを積極的に進めれば、低所得者向けの公営住宅の不足も緩和できるはずです。
最低限の安定した住居を保証することは、格差の拡大を食い止めることに役立ち、社会の安定を図るためにも是非とも必要なことなのではないでしょうか。
昭和三〇年(一九五五)に地価指数の基準改定があったため、昭和二〇年代(一九四五から五四)、昭和三〇年代(一九五五から六四)、昭和四〇年代(一九六五から七四)としている。
また、消費者物価は、昭和三〇年代、四〇年代については、東京都区部五大費目総合指数(除く帰属家賃)を用いている。

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